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デルフォイの神託

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【参考:日経サイエンス 2004年1月号】

原題: Questioning the Delphic Oracle

1996年、考古学者と地質学者の親子、マイケル・ヒギンズとレイノルド・ヒギンズが本を出版、「ギリシャとエーゲ海の地質学手引き」がそうで、泉をつないだ線はを聖所を通って北西から南東に走る切り立ったデルフォイ断層の存在を示すものだとした。

彼らは、放出されていたガスは二酸化炭素だったと推測した。今から10年前、別の調査隊が小アジア(現トルコ)のヒエラポリスにあるもう一つのアポロン神殿で、二酸化炭素ガスの放出を検出した。ストラボンの文献を手がかりに、現代の研究者たちはヒエラポリスのアポロン神殿があえてガスの出口の上を選んで建てられていたことが明らかになった。ヒエラポリスの神殿では予言は行われなかったし、二酸化炭素ではトランス状態を行き起すことはできない。また高濃度の二酸化炭素は非常に危険で、そもそも人々は近付くことが出来ない...。

先の考古学者デ・ボーアはアポロン神殿の周囲を見渡す全体像を捉え、パルナッソス山の隆起した斜面で露出している断層が瀝青質石灰岩層を含むものであることを発見。断層に沿った活動で摩擦が生じてそれらの石灰岩が加熱される結果、石油化学成分が気化し、湧き水とともに断層を伝って地表に上ってきたという結論に達した。長い年月の間に、析出した方解石が断層内の隙間を埋めてガスの放出は減ってゆくが、断層がずれると再び放出が盛んになる...、ということは20世紀の初頭の発掘の頃には塞がった状態であったのではないか?