2006年4月8日
花まつり、および灌仏会へのローマ教皇祝書授与式

仏教のお釈迦様の誕生日を祝う「灌仏会(かんぶつえ)」通称「花まつり」が各地で行われました。
長崎市内では、二十数か所の商店街などで花御堂とお釈迦様の像が設置され、道行く人が像に甘茶をかけてお祝いをしました。
また、この日に向けてローマ教皇庁諸宗教対話評議会から祝書が届き、浄土宗大音寺に於いて高見三明師(カトリック長崎大司教区大司教)から本原大義師(浄土宗大音寺住職)へと手渡されました。

授与式 出席者
本原大義 師 (浄土宗大音寺住職)
高見三明 師 (カトリック長崎大司教区大司教)
神崎正弘 師 (真宗大谷派法生寺住職)
楠 達也 師 (浄土真宗本願寺派光源寺住職)
松尾法道 師 (黄檗宗興福寺住職)
野下千年 師 (カトリック中町教会主任司祭)


■花まつりの模様

チトセピア前

住吉商店街

中園商店街

花御堂

お釈迦様の像

各場所を担当の住職様がお祝いしました。
(写真は、三浦達美師(大光寺住職))

■授与式の模様(於 浄土宗大音寺)

式の前に甘茶をかけてお祝いしました。
写真は本原大義師
(浄土宗大音寺住職)

高見三明師
(カトリック長崎大司教区大司教)

野下千年師
(カトリック中町教会主任司祭)

全員で合掌

高見三明師が祝書の訳文を読み上げます。

本原大義師へと手渡されました。

今回の参加者の皆さんです。

■ 祝書 訳文
教皇庁 諸宗教対話評議会
議長  マイケル・フィッツジェラルド大司教

共に人類に奉仕する仏教徒とカトリック信者
2006年 灌仏会を迎える仏教徒の皆さんへのメッセージ

バチカン市国

親愛なる仏教徒の皆さま

1.灌仏会を迎える仏教徒の皆さま、また世界中の仏教共同体の皆さまに、教皇庁諸宗教対話評議会を代表して、私は心からのお祝いを申し上げます。
皆さまが、喜びに満ちたお祝いの時を過ごされますよう願っております。

2.今年も、この機会を拝借し、私たち双方の共同体の絆をいっそう強められるよう、いくつかの考えを皆さまと共に分かち合いたく存じます。
今回は、教皇ベネディクト十六世が、世界中のカトリック信者に向け発布した最初の回勅に基づいて考えてみたいと思います。
それは、『神は愛』という書簡で、ラテン語では、『デウス・カリタス・エスト』という題がつけられており、愛の情質に関する考察です。
教皇さまは、「愛」という言葉を頻繁に使われながら、多くの場合誤って解釈されているこの言葉が、再び本来の正しい意味合いを見いだし、日々の生活を導くものとなるべきことを確信しておられます。

3.ベネディクト教皇は、二つのタイプの愛について語っておられます。
一つ目は、「エロース(性愛)」、すなわち男性と女性の間の愛で、自分自身の幸せを求める愛です。
二つ目は、「アバペー(愛徳)」で、相手のためになることを求める愛で、相手がそれを気に入らなかったり、それについて知らないという場合もあり得ます。
カトリック信者にとって、この二つ目の愛は、神への愛、すなわち神が人間に対して示された愛に私たちが答えることにより初めて可能になります。
このように神への愛と、同胞である人々への愛は、切り離すことができないもので、ただ一つの掟を形成します。
「愛は愛によって成長します。愛は、“神聖なもの”です。
なぜならば愛は神から来るもの、私たちを神と一つに結ぶものだからです。」(『神は愛』18)

4.私たちカトリック信者は、「アガペー(愛徳)」の完全な現れは、生涯を通じ、言葉とわざをもって神の愛のよきおとずれを説かれた神の子、イエス・キリストのうちにあるということを信じています。
この愛は、イエスが全人類のために自らの命をお与えになったとき最高の形で示されました。
また、とくにご聖体という形でご自分をお与えになったイエスは、いっそう「アガペー(愛徳)」の源であるといえます。
カトリック信者は、この源から汲み取り、兄弟姉妹、とくに貧しい人、苦しんでいる人々に愛を示しながらイエスの足跡にお従おうとしています。

5.仏教徒の皆さまは、「メッタ(慈)」という概念の内に示されている愛を人々に与えておられますが、私たちはその大切さを皆さまとの対話を通して知ることができました。
その愛は、所有欲のない、人々を助けようとする愛です。
それは、人類の善のために、利己的な関心を犠牲にする覚悟をもった愛であると考えられていいます。
仏教の教えによれば、「メッタ(慈)」は、単に善意を抱くというだけでなく、ひとりひとり、全ての人に仕えるために、慈善のわざを実践するところまで及びます。
それは、真に普遍的な善意です。
もう一つ忘れてならない功徳は、「カルーナ(悲)」です。
これを通して、生きとし生けるものに対する優しい慈悲が示されます。

6.世間では、愛という言葉がよく使われ、また乱用されていますが、仏教徒とカトリック信者が、それぞれ自らの伝統を出発点として、この言葉の本来の意味を再発見し、それぞれ自らが理解したことを分かち合うならば、それこそ有益なことではないでしょうか。
愛と真理に基づく関係を築き、相互の尊重を深めながら、対話と協力を促進させ、必要を抱えている人々のために奉仕し、一緒に働いていくことは、仏教とキリスト教、いずれの伝統に従う者にとっても励ましとなることではないでしょうか。

7.これらのことを思い巡らせながら、私は最後に、この灌仏会のお祝いが、仏教徒とカトリック信者の友好をいっそう強め、「アガペー(愛徳)」と「メッタ(慈)」の精神のうちに、私たちの協力関係をますます深めてくれる時となるように願います。
このような精神を持って、わたしはあらためて皆さまに心から灌仏会のお喜びを申し上げます。

2006年2月14日
教皇庁 諸宗教対話評議会
議長 マイケル・フィッツジェラルド大司教


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