その日はカラリとした快晴とはいかなかったが、人々のこころは満足感で溢れていたことはその表情から見て取れた。

フランスのテゼ共同体からブラザーギランが来崎、二泊三日の間にブラザーが残していったものとは...

MIND OF TAIZE 2005.4.25 19:00〜 お告げのマリア修道会本部大聖堂
主催:アジェンダNOVAながさき  協力:ブラザー・ギラン
テゼって?

ブラザー・ギランが長崎駅に降り立ったのは、テゼ前日の24日午後9時前のこと。
改札を出てくる、やや小柄のブラザー・ギランは一目ですぐにその方とわかった。

5人の子供達によって点灯されたキャンドルの数々...
両端の赤い布は聖霊をあらわしている。
高さ7メートルという高低差のなかで、
中央にある十字架像の存在感をひときわ高めていた。

ブラザーを最初に待ちわびているのは中町教会の司祭館。その距離はタクシーを呼ぶには少々短く、「タクシーにしますか?」という問いかけに「近いのなら是非歩きたい!」というブラザーの返事に迷わず歩くことになった。一日の喧騒も夜の帳にすっかり形をひそめて、頬をなでる風もなんとも冷やりして心地好い。ご自分で「歩く事務所」と呼ぶ、一ヵ月に及ぶ海外での生活に必要なツールがすべて納まっているバックパックとキャリーケース...いかにも旅慣れた様子だ。

翌日、ブラザー・ギランと企画責任者の野下神父が長崎市小江原の「お告げのマリア修道会本部」の会場に到着したのは午後4時前。野下神父は急遽キャスティングしたクラリネット奏者のためのパート譜を急いでコピーされていて、私とブラザーとでしばらく当日の流れなどについての会話が進んだ。その後、コピーを終えた神父を交えて正式な打合せが始まった。

インストゥルメンタルの面々は日中はそれぞれの仕事があり、全員揃ったのは本番開始の僅か一時間前の5時半頃のこと。それでも昨年も参加した方もいて、本番にはまったく支障はない様子だ。ブラザー・ギランはインストゥルメンタル達の音出しを遠巻きに見ながら、ご自身のスピーチ内容などを繰り返し反芻されている模様だ。

準備で奔走している最中にふと気が付くと、聖堂内に小さな5人の子供達がシスターに率いられて入ってきた。正装に身を包んだ愛らしい子供達で、3人の女の子と2人の男の子だった。本番スタートとともにキャンドルに点火するのが彼らの仕事のようだ。「練習させないと、ちゃんとできるかとても心配です...」とシスターが真剣なまなざしで言っている。そこで直ぐに練習に入ってもらった。

あとから聞いてわかったことだが、彼らのうち2人はキリスト教徒ではなかったという。その父母がともにテゼの会場にいて、その子供達がキャンドルに点火するのを見守ったということを、とてもいい機会だったとシスターは振り返る。

インストゥルメンタル (左から順に)
Org. 川脇絹代  Fl. 吉野良介  Vn. 齊藤享  Fl. 藤原みか
Cr. 山田芳美  Gt. 中山直人 Gt. 益田洋一

賛美の歌が2つ終わったところで、ブラザー・ギランのスピーチが始まった。その通訳には高見三明大司教があたられた。その光景はまさにカトリックとプロテスタントの和解による平和のメッセージを旨とするテゼの心そのものと映った。

本番の共同祈願をリードしていただいた5人のうちのお一人も、同様にキリスト教徒ではなかったが、このようにテゼでは宗教宗派や信条を超えたところで営まれるところに意義を見出すことができる。


今回はインストゥルメンタルもその演奏のレベルの高さに会場の人々の評価も高かった。アンケートに答えていただいたほとんどの方がその演奏を「大変良い」と評価していた。また私が見送りに立った浦上駅のプラットフォームでブラザーギランも「彼らの演奏は大変良かった」と言っていた。私個人としては初めて体験した昨年と比較して、キャスティングにも関わっていたためか、全体的に個性が全面に出すぎていたように思えた。

お告げのマリア修道院は建設されたのは今から13年も前とは思えないような素晴らしく近代的な建物で、内部も新築と見間違うくらい掃除が行き届いていた。シスターたちや修練生たちは全員が総出でテゼに参加していただき、また終了後の撤収まで手伝ってくださった。

最後には美味しいコーヒーまでご馳走になり、応接室でスタッフは修道院であることも忘れてすっかりくつろいでしまった。「シスターたちはそろそろお休みいただかないと!」という私の一声で、男性スタッフも火がついたように立ち上がって、帰途に着いた。

その日、日本聖公会長崎聖三一教会の牧師の方に加え、曹洞宗や浄土真宗のご住職がお二人参加され、口々に「とてもいい集いだった」とおっしゃった。ご住職は「超宗派でこうしたことをさらに推し進めることが出来たら...」とコメントを寄せておられるが、私たち運営にあたったアジェンダNOVAながさきの願いと見事に一致した。

来年が待ち遠しい!   アジェンダNOVAながさき事務局 あゆかわ